アメリカの片田舎に住む老婦人「ステラ・バートン」は、ある日相棒の黒猫「ミス・キャット」とニューヨークを目指し旅立った。
・・・人生最愛の彼「ラリー・ゴールドマイン」に会うため・・・。
途中、ひょんな事からダンサー志望の女性「ウエンズデー・コール」も、その旅に加わる事になる。彼女達を乗せたピンクのキャデラックが、波瀾万丈の珍道中を始める。
・・・合い言葉は「You Can Fly!!」
「虹僕」の稽古帰りのロイヤルホスト。壁には一面の絵が描かれていた。ニューヨークの空撮のような絵。なにげなく見ていたら、おばあさんの話がやりたくなり、若い女性と2人ピンクのキャデラックで旅をする話になりました。その時点でキャスティングしてると、主人公は二ツ山未来嬢、若い女性をヨーコ嬢でと言うことになりました。ヨーコ嬢にするなら、若い女性はダンサーで行こうとなる・・・。そしてタイトルは「dear cowgirl」にしようと。これはラリーから届いた手紙の書き出しの文句です。しかし、二ツ山嬢の降板で、ユッコ嬢が主人公に決定。下が初期キャスティング。
●ステラ・バートン 65歳 昔カウガールコンテストで12〜25歳までグランプリ。初出場11歳は準グランプリ。性格は明朗快活で、弱り目でも笑い飛ばせる、肝の座ったおばあさん。(ユッコ)
●ウェンズデー 30歳 ダンサー志望だったが、夢やぶれ男の為にウエイトレスをしている。名前にコンプレックスを持っていて、ウェンディーと呼ばれる事を激しくイヤがる。(ヨーコ)
●「年老いた」黒猫ミス・キャット 17歳 太った黒猫。かなり気まぐれな性格。(伏見)
●ロディ・コール 31歳 元メジャーリーグのエース。肩を壊して引退。ウェンディーの男。いいヤツなので、騙されて運び屋をやらされる。(里中)
●アレキサンダー(アレックス)・バートン 35歳 ステラの一人息子。銀行員。おとなしい小心者。(山岸)
●パメラ・バートン 30歳 アレックスの妻。物静かな女性。ステラは、ウェンディーと同じ年齢のパメラを、比べる。(ヨーコ)
●ボビー・バートン 10歳 アレックス、パメラの長男。祖母に似て活発。名前はアレックス命名のため地味。(朝比奈)
●アニー・バートン 7歳 ボビーの妹。おシャレにうるさい子。名前が大いに不満。(伏見)
●キース・シャッフル 45歳 麻薬組織のボス。COOL。(土居)
●ビンス 29歳 キースの部下。小柄で神経質。(野沢)
●グレッグ 27歳 キースの部下。ボーっとした怪力男(朝比奈)
●ラリー・ゴールドマイン 67歳 ステラに手紙を出す元恋人。ニューヨーク在住の資産家。(青木)
●オープニングと途中に出てくるトラッカー。(渡辺)
この時点では人間だけの物語でした。この頃、オープニングに使う曲を聴かされる。その曲でインスピレーションしたのが、あのオープニングです。鳥がパラマウントの山を飛び越え、森の中に入りバイクに乗った郵便屋を追い越す。郵便屋の鞄に「プロジェクトニュートラルプレゼンツ」の文字。木のアーチを抜け、白い生け垣を越えてバイクを止め、一件の家に入って行く。このバイクのナンバープレートにタイトル「dear cowgirl」。こんな絵コンテを描きました。これをベースに【pistol1920】のキャスティングが進んで行くのですが、新人粕谷君と鶴岡君の参加、土居氏、二ツ山嬢の不参加などがあり、ステラ、ウェンディー、ラリー以外を見直す必要がでてきたので、あの公演になったのです。大きく変更したのは、キースがステラ達の幼なじみ。ビンスとグレッグが、チーズバットとバターボールに。【pistol1920】をメモリーツアーの話にするために、トラック運転手をヒロ山梨に変更。猫のシーンを大幅に追加。あとはステラ、ラリー、キースの年齢変更。
その追加した猫のシーンが、脚本の頭を悩ませたようです。最後には発狂してました。そのため、最後の倉庫のシーンからエンディングまで、荒書きシナリオを作り、それを元に脚本にしたようです。
渡辺台本の常で、できた所から稽古が始まるので、オープニングシーンから作り始めました。曲に合わせて大体の絵はできてたので、イメージ通りにはなってます。バイクは自転車に変更。郵便屋を演じた粕谷君は、マイムに苦労したようです。二ツ山嬢のステラで予定していたファーストネームは、ユッコ嬢に変わったのでステラ・ヘビーウエイトに変更。このシーンは苦労した割にあっさり流れたので、ご存知ない方もいらっしゃると思いますが、ステラが部屋を出るまでの間、1曲丸々使っています。で、曲のアクセントに合わせて演出つけてますので、ビデオになったら見てください!この頃だったかな?ロディを里中君から朝比奈君に変更。里中君は野球マニアだし「八月の森へ行こう」でも野球部のエースの神崎ハジメを演じてるので、ロディにははまり役だったからこれは大冒険でしたな。このせいで朝比奈君の苦悩の日々が始まるのでした。なんと言っても目立つ役。今までの役作りではダメだと言う事で、地獄の特訓が始まったのです。毎日二人の演出にダメ出しされて、居残りさせられて、目はウルウル。自殺するんじゃないか、ノイローゼになるんじゃないかというぐらい、叩いてみました。ただ、ロディに集中してたので、彼の猫役マイキーが謎だったのは残念。
ステラ役のユッコ嬢も苦労したようです。曲のアオリや周りの演技が白熱してると、つい流されて自分のセリフも白熱してくる。ステラはのんびりしたキャラクターなので、飲まれないように!がいつものダメ出しでした。猫役のマダム・ヤンヤンを、突然大阪弁にしたいと言いだしたので、あわてて翻訳。
ヨーコ嬢の猫役赤目のルビーには驚かされました。竹内君演じるロンロンとの決闘シーンで、何故か笑ってたので理由を聞いて見ると、「戦えて楽しかった」からだと。死闘のつもりだったのに、自分がそのキャラクターになると、思ってもいない方へ行くのだなと感心。さすが看板女優。
山岸君の猫役モンローは藤井隆氏をモチーフにしていました。が、彼は藤井氏をよく知らなかったようですな。ちょっと変わったキャラクターになっています。でもお客さんの反応よかったので、成功みたいです。
この脚本でもトイズファクトリー内でもめました。エンディングでもめるのは毎回の事になってきました。
衣装は僕のデザインを、主宰渡辺のお母様が制作。フード付きジャンプスーツに、公演前日布用塗料で文字入れしました。背中の文字を並べて、単語にするのは早い時期から決定していました。公演当日、劇場前にいると向こうから歩いてくる3人の家族が。その中に、3歳ぐらいの女の子がいたんですが、その子の服がチラシのステラと同じ!なんかうれしかったです。残念ながら途中で泣き出して、帰っていかれました。